中国現地記者 C.L.
中国では、歯科衛生、虫歯治療、根管治療、歯周病治療、ブリッジ、インプラントなどの「予防や治療」から、歯科矯正、ホワイトニングといった美容歯科などの、幅広い診療を取り扱う日本でいうところの「自由診療」をメインに行うクリニックが上海、北京、深圳などの大都市で増えてきています。
ここ数十年の急激な経済発展に伴い、国内で文化や教育に大きな差が生じた昨今、富裕層を中心にオーラルケアに関心が高まっています。留学経験や海外での生活経験のある、もしくは今後留学予定のある富裕層の若者を中心に、歯科矯正に興味を持つ人が増えてきました。
今回はそんな日々、国民のオーラルケアに対する関心が向上している中国のお口ケア事情について、現地在住記者より最新情報をお届けします。
自宅でのお口ケアとして、中国では、歯を歯ブラシでブラッシングすることが一般的なお口ケアとしておこなわれています。
フロスや歯間ブラシなどを使った「+αのお口ケア」や、「定期的に歯科医に通い、歯のクリーニングを受ける」といった定期的な予防ケアはまだ一般的に広まっていません。
ではなぜあまり国内に広まりきっていないお口ケアに興味を持つ人が現れたのでしょうか?
そのカギは「欧米諸国の美容歯科」です。中国の大都市には、たくさんの欧米企業が拠点を構えています。これらの欧米企業で働く中国人や、海外へ留学し、海外の生活に慣れ親しんだ後、帰国した多くの中国人は、欧米諸国で推奨されている、歯科矯正、ホワイトニングといった美容歯科に興味を持つようになりました。
また、昔以上に現地の富裕層の若者を中心に、幼少期から歯科矯正を受ける人が近年増えてきています。
しかし、このような他国のお口ケア事情で、歯のケアに関心を向ける人が高まっているとはいえ、一般的に予防や美容歯科を中心とした治療を受ける人は限られており、世間一般での歯医者へ行く目的としては、「虫歯治療」が中心となっています。
日本のサービスや診療方式を推奨している歯科医院があります。
上海のグリーンクリニックという歯科医院では、「デンタル部門」を設け、常駐している日本人歯科医師2名による歯科診療を行なっています(この医師らは日本の歯科医師免許を持ち、中国政府からも正式に診療許可を取得しています)。
受付から日本語での対応で、言葉の心配も不要のため、現地に駐在している日本人家族にも人気です。
プライバシーを保つために、個室での治療をおこない、日本製のデンタルチェアーおよび歯科医療機器、デジタル歯科用のX 線撮影装置、歯科技工機器などを完備しています。
このような日本式のサービスや治療は、現地に住む日本人だけでなく、中国人富裕層にも人気です。
近年2月の春節の時期などになると、日本のドラッグストアで、中国人観光客が商品を大量に買っている光景を見たことがある人もいるかもしれません。
これまでは、中国人観光客が日本でたくさん購入するものとしては、中国国内との価格差が大きい高級ブランド品が人気でしたが、昨今は調理器具、歯磨き粉、ハンドクリームといった日用品が人気商品となっています。
ここ数年中国では、日本で言うところの「丁寧な暮らし」といったようなライフスタイルへの関心が強まり、日用品を含む生活の質や、外国のライフスタイルに対して関心を持つ層が増えています。
このようなニーズを満たすという意味で「日本の商品は種類が多く、安くて品質も良く、効果が高い」と日本を訪れた中国の友人達も話していました。
中国の都市部の多くの歯科クリニックでは、クリーニング、虫歯予防検診、歯科検診、歯磨き指導を盛り込んだ、歯のクリーニングセットを100元(日本円で約1671円)以下で提供するキャンペーンをおこなっています(色素沈着や虫歯が見られる場合は別途追加料金が必要となります)。
フリーペーパーなどに広告を出し、オーラルケアに関心を持ってもらうとともに、その後の歯科矯正などにも繋げるアプローチをかけています。
現地の中国人のインターナショナルスクールに通う子供達の大半は、欧米系のクリニックで矯正の治療を受けています。
これらの欧米系のクリニックでの治療には、現地の公的保険が利用できないことが多いのですが、最新の設備やサービスの違いに魅力を感じる人が多く、私費で高額な治療を受けています。
日本でもオーラルケア商品の登録や販売には法律で整備されていますが、中国でも同様に法整備をされ販売されています。
2020年6月には「化粧品監督管理条例」が公布され、2021年1月から施行されています。
この最新条例は、初めて歯磨き粉を「一般化粧品の」規定に準じて管理するというもので、本条例の77条においては「歯磨き粉は通常の化粧品の規定に基づいて管理され、虫歯予防、菌の抑制、歯茎の問題軽減などの効果について歯磨き粉の宣伝できる」としています。
効能についての宣伝については、43条で「化粧品広告の内容は、真実で合法的であるべきだ」と指摘しています。つまり化粧品広告は製品が医療作用を持っていることの明確に提示し、暗示、虚偽または誤解を招く内容を含んではならず、消費者を欺く行為、誤解を招くことはしてはならないということです。
公布に伴い、2020年、7月には、口腔清潔ケア用品の生産企業と原料、設備、包装生産企業及び関連科学研究院、品質検査機構などのオーラルケアの製造に関係する企業と、中国口腔清潔ケア用品工業協会という団体が「『化粧品監督管理条例』公布後の歯磨き粉管理方式についての説明」という条例にともなった歯みがき粉の管理などについて発表しています。
このように、化粧品の定義に歯磨き粉は含まれておりませんが、歯磨き粉は一般化粧品に関する規定を参考に管理されています。
いかがだったでしょうか?中国では歯科の美容の最先端サービスを提供する欧米諸国に比べて、全国的にお口ケアのサービスが広まりきっているわけではなく、虫歯治療が基本となっています。
しかしながら、他国の歯科の最新設備やサービスを導入することで、お口のケアに対する意識が急速に高まってきているため、欧米諸国に匹敵するほどの歯の美容国家になる日も近いかもしれません。
中国全体での、日々変化する歯科医での治療目的やオーラルケア商品のニーズの高まりに注目し、今後も中国の最新歯科情報についてお届けしていきますのでお楽しみに。
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