イギリス現地記者 森野万弥
我が家にはお兄ちゃんのクラウス、弟のアロイスという名前のチワワが2頭います。数年前にクラウスの口臭が気になり始めたので、動物病院に連れて行くと、案の定、歯科治療が必要とのこと。
犬の歯科治療は人間のように椅子に座って30分で『はい、終了!』とはいきません。時間も費用もかかる上に、麻酔下で行われるため体への影響も心配です。
今回は、私の愛犬たちが実際にイギリス現地で受けた歯科治療体験についてお話ししていきます。日本国内の歯科診療との違いに触れながら、2頭の愛犬の歯が今どうなっているのか、歯磨きはどうしているのかなど詳しく紹介していきます。
私たちの住むイギリスではゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー、ボーダー・コリーなどの大型犬が主流で飼われています。
これら大型犬は骨格や食生活の違いで虫歯になりにくいため、小型犬ほど歯のトラブルに見舞われません。
そのせいか、イギリスでは犬の歯磨きが話題にのぼることもあまりなく、私自身もあえて、愛犬の歯磨きをしなければと思ったことは今までありませんでした。
動物病院での歯科治療の流れは次のようになります。
治療の前日の夜8時以降は食事抜き。これは麻酔下で胃の内容物を嘔吐し、窒息するのを防ぐためなので重要なルールです。
治療当日。動物病院へ到着した後は、血液検査→点滴→前脚への注射による麻酔が効いたところでガスによる全身麻酔が行われます。麻酔下では、モニターで心拍数や体温などを常に書くにしながら処置が進められます。
まずは歯と歯茎の状態を詳しく診断をし(診断には、レントゲンを使うこともあります)、虫歯や欠けた歯など痛みを伴う症状があれば抜歯します。その後、白く輝く健康な歯を取り戻すために、歯石除去・研磨作業を行います。
治療が終われば意識が戻るまでケージ内で待機し、問題がなければ当日午後には帰宅できます。これだけの準備、処置にはそれなりの時間を要するため、全身麻酔は必要不可欠です。
とはいえ、予期せぬ事態が起こる可能性もゼロとは言えません。治療前には「麻酔によるリスクが伴うことを承諾する」と明記された承諾書にサインしなければなりません。ほとんどのケースでは大丈夫だと分かっていてもやはり不安になります。
今回の治療では抜歯を2本したクラウスが240ポンド(日本円で3万3600円)、抜歯なしのアロイスが190ポンド(日本円で2万6600円)でした。
日本にはペット保険がありますが、イギリスではペット保険でも犬の歯科治療は対象外なのですべて実費です。
以前にクラウスが歯科治療を受けた後『これからは頑張って歯を磨こう!』と決意した私は、ペットショップにデンタルグッズを買いに行きました。
なかなかの品揃えでしたが、とりあえず犬用歯磨き粉と乳児用の歯ブラシを購入。
ところがいざ磨こうとすると、歯ブラシを顔に近づけただけで、ものすごい形相で怒るクラウス。口の近くに持っていくと噛みつこうとしたので、何度か挑戦しましたが、これでは指が何本あっても足りないと諦めました。
それから1年半…せっかく綺麗にしてもらったクラウスの歯はまた歯石だらけになってしまいました。
弟のアロイスは8歳になり、シニアの仲間入りをしましたが、口臭も気になり始めたので口の中をチェックしてみたところ、歯石がびっしり。というわけで今回は2頭とも歯科治療をしてもらいました。
さあ今度こそは歯磨きを習慣に!と、治療後数日が経過して落ち着いたところでクラウスの歯を磨こうと試みるもまたもや失敗。
対してアロイスはというと、意外とすんなり歯ブラシ受け入れてくれました。アロイスは家族のなかでも私にだけ特別に懐いているので、うちの子の場合は、もともとの性格というよりも信頼関係の問題かもしれません。
このようにワンちゃんの性格や、飼い主さんとの関係性でも歯を磨く難しさはその子その子で全く異なります。
二度目の治療から1年が経過した今、2頭の歯がどうなったかというと・・・
クラウスの歯の根元が茶色くなり、歯石がついてしまっていることが分かります。
一方、この1年少なくとも1日おきに歯磨きを続けたアロイスの歯は・・・
歯科治療後の状態とほぼ変わりません!毎日の積み重ねは大事ですね。
クラウスとアロイスで全く歯磨きに対するリアクションが違うように、ワンちゃんの性格などによっては、歯磨きを極度に嫌がる子もいます。
怒るからやらせてくれない…と諦めず、「歯磨きは楽しいもの」と思ってもらえるように歯ブラシで体に触れることに慣れてもらうなど、焦らず段階を踏んで慣れていってもらいましょう。
2頭とも5年後、10年後もおいしくご飯が食べられるようにしてあげたいので、歯磨きで補えない部分はサプリメントやデンタルガムなど、デンタルグッズを総動員して丈夫な歯を保てるようこれからもがんばろうと思います。
実はプロバイオティクスの考え方の定義は、1989年、イギリスの微生物学者Fullerにより「腸内フローラのバランスを改善することによって、人に有益な作用をもたらす生菌添加物(食品)」と定義されたものです。
以前からプロバイオティクスの学術論文が発表されていますが、今回歯科治療をしたように、イギリス国内では、まだ歯石や虫歯ができる前に予防するという意識は低いように思います。
今後さらに学術データが増え、商品としての取り扱いも増えていけば、お口のプロバイオティクスへの意識も向上し、イギリスの歯磨き意識に革命が起きるかもしれません。これからも実体験やイギリスでの実情を交えながら、歯にまつわるタメになるお話しをしていきますので次回もお楽しみに!
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