カナダ現地記者 Mitsuko_K
今回のボイスCLIP取材レポートでは、カナダ人の歯に対する考え方やカナダでのデンタルケア、オーラルケア事情について、現地在住の記者からの情報をお届けします。
日本で八重歯はチャームポイントのひとつと考えられており、魅力的に捉えられることが多いですが、カナダでは正反対。歯並びが悪いと見られることで印象が悪くなり、面接で落とされる原因にもなってしまうほどです。
カナダでは、美しい歯並びと白い歯が美徳とされ、Ipsosサイトによると、歯科矯正をしているカナダ人は13%います。
私自身、八重歯で歯並びが悪かったため、カナダ人の夫から強く勧められ歯科矯正をした経験があります。
矯正している間は「痛い」「食べづらい」「食べ物の制限がある」「常に違和感があり気になる」など、大変でした。
しかし終わってみれば、歯並びが綺麗に揃うことで、見た目が美しくなっただけでなく、長年悩まされていた歯ぎしりや偏頭痛、さらに体の歪みまで治ってしまいました。この経験によって歯並びの大切さを痛感し、夫に感謝しました。
また、同サイトより、歯科 にてホワイトニング施術を受けた人は9%います。
私もホワイトニング施術を受けたうちのひとりです。
私が受けたのは、デュアルホワイトニングと呼ばれる方法でした。歯科で歯の型をとってマウスピースを作り、歯の白さを選んでからホワイトニングの施術を受けた後、その効果を保つために型と共にホームホワイトニングキットを受け取って、その後も白さを維持できるようにするというものです。
歯が白く綺麗になると、見た目が良くなるだけでなく、気持ちまで明るくなったのを感じました。
カナダで売られている歯磨き粉は日本に比べてフッ素の入っている量が多く、虫歯や口臭予防効果が高いのが特徴です。
YCHARTSサイトの調査では、カナダでの歯磨き粉の価格の平均は$3.37(約290円)となっています。
歯磨き粉に含まれるフッ素量はブランドや製品によって異なりますが、ARM&HAMMERの「Bright & Strong」は0.11%、Colgateの「Sensitive Prevent & Repair」は0.24%、Crest の「PRO HEALTH」では0.454%でした。
歯磨き粉の種類は、「虫歯予防」「歯のエナメル質を丈夫にする」「歯を活性化させる」「徹底的に歯を綺麗にする」「口臭予防」「歯の補修」「繊細な歯専用」「ホワイトニング」、またはいくつかが組み合わされたものなど豊富にあり、目的や用途によって最適なものを選ぶことができます。
デンタルケアの中ではホワイトニングキットが人気で、薬局にたくさんの種類が並んでいます。これらは歯科でホワイトニングをしてもらうよりも格段に安いため、手軽に手に入れられるのも魅力となっています。
オーラルケアとしては、ホワイトニング効果もあるマウスウォッシュが人気で、とにかく多くのカナダ人は“歯が白いこと”に気を使っています。
The State of Oral Health in Canadaサイトより、カナダで1年以内に歯科医に診てもらった人の調査では、74.5%となっています。
同サイトの調査にて、80%ものカナダ人がかかりつけの歯科医を決めており、大抵は半年間に一度は定期健診を行い、歯のクリーニングもしてもらいます。
カナダ人にとって、歯科医は歯が痛くなったり問題が起きたりしてから行く場所ではなく、“歯が悪くならないように”事前に予防するための場所です。歯の治療目的で歯科医にかかることが多い日本とは大きな違いです。
さらに日本との違いは、歯の間を綺麗に掃除するためのフロス(糸)の使い方を歯医者から徹底的に指導されることです。
Electric Teethサイトの調査によると、カナダでは、43%の人が毎日フロスを使って歯磨きをしています。
もう15年ほど前の話になりますが、私はカナダに来るまでフロスを使ったことがなく、使い方も知らなかったため、歯医者さんにやり方を教えてもらいました。
使い始めた当初は歯にあまり隙間がなく、フロスの糸を通すのが大変だったり、毎回血が出たりしてしまったのですが、慣れてくると歯の間にスムーズに糸が通るようになり、やりやすくなりました。自分では綺麗に歯ブラシで歯を磨いたつもりでも、フロスを使うと隙間に詰まっていた物が出てくるため、フロスを使う大切さを実感し、今では毎日の習慣になっています。
また、カナダでは普通の歯ブラシよりも電動の歯ブラシを使うようにと、3歳以上の子供から大人まで指導されています。
そのためか、充電式電動歯ブラシの世帯浸透率は、日本では5%(P&G調べ)ですが、それに対してカナダはElectric Teethサイトの調査によると49%にもなります。
子供用の電動歯ブラシは、色がカラフルなもの、キャラクターもの、光るもの、歯磨きの間音楽が流れているものなどがあり、それによって歯磨きの時間を楽しませ、子供が飽きない工夫がされています。
最近、日本でも話題になっているようですが、フロスに代わるツールとして、高圧の水を噴射して口内を綺麗にできる口腔洗浄機の人気が高まっています。カナダでは、“ウォーターピック”と呼ばれています。
私の家族も、歯科医に勧められてウォーターピックを購入したうちのひとりです。
ここでは一般的なウォーターピックの使い方を簡単に説明します。
<使い方の手順>
①本体後ろのタンクに水を入れます。この時、冷水にすると歯にしみてしまう可能性があるため、ぬるま湯を入れることをおすすめします。
②水圧の強さを選びます。
③ノズルの先を奥の歯の隙間に入れ、ハンドルの手元のスイッチを入れます。間違っても口の中に入れる前に電源を押さないでください。また、この時水が流れても大丈夫なように洗面台やシンクでおこなってください。
④ノズルを奥から前へと、歯と歯茎の境目に沿ってゆっくり移動させます。反対側も同じように奥から前へと移動させてください。一旦ノズルを外す時には毎回電源を切らないと、周りが水浸しになりますので気をつけてください。
ウォーターピックを使うことにより、歯ブラシやフロスでさえ取り切れない汚れを強力な水流で洗い流すことができます。こちらはノズルを付け替えて、歯茎をマッサージすることもできます。
水流によって綺麗にする方法なので、歯が弱くなったり、刺激に敏感になったり、歯茎の厚さが薄くなってくる高齢者の方には特におすすめです。
日本では、子供のためのケアと言えば歯医者に2〜3ヶ月毎に通い、フッ素を塗ってもらうのが一般的ですが、カナダではこういったことはしません。その理由は水道水にあります。カナダの水道水にはフッ素が含まれています。そのため、わざわざフッ素を塗らなくても、水道水を飲んだり、歯磨きをしたりといったことで、自然と歯がフッ素でコーティングされるためです。
また、子供用の歯磨き粉であっても、2歳以上を対象にした歯磨き粉の中には、フッ素が含まれているものも売っています。とはいえ、歯磨きをしなければ虫歯になってしまうのは、どこの国でも同じですね。
虫歯予防に有効なフッ素ですが、塩分と同じで大量に摂りすぎるのは良くありません。また、永久歯が完成していない幼児期にフッ素を過剰に継続して使用していると、「歯のフッ素症」と言われる、歯の表面が白くなる発育不全が起こることも分かっています。
そのため歯みがき粉を飲み込んでしまう可能性の高い3歳くらいまでの低年齢の子どもは、歯のフッ素症発現の可能性があるため、年齢に合わせた適正量と許容量が定められています(フッ化物の摂取目安量1 日 0.05mg/kg <米国医学研究所(IOM: Institute of Medicine)>)。
今回は、カナダ人の歯に対する考え方や、カナダのデンタルケアとオーラルケア事情についてご紹介しました。いかがでしたか? 日本との違いに驚かれたことはありますでしょうか?
日本でもここ最近、歯に対する美意識は高まってきているようですが、カナダに比べるとまだまだだと感じます。歯のケアをすることは見た目の美しさのためだけではなく、体全体の健康のためにも大切です。
もしあなたが、歯が痛い時にしか歯科医にかからなかったり、フロスやウォーターピックを一度も使ったりしたことがなかったり、歯並びが悪くて健康にまで影響を感じたりしているなら、これを機会に少しでも歯への意識を向けてみてはいかがでしょうか?
これからも現地ならではの情報をお届けしていきますので、お付き合いいただけると嬉しく思います。
■Electric Teeth
■The State of Oral Health in Canada
■Ipsos
■YCHARTS
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