犬を飼っている人は、犬にペロペロと口周りを舐められた経験が一度はあるかと思います。
愛犬であれば「汚い…」とは思わず、寧ろ嬉しいくらいに思う人が多いのではないでしょうか?
今回はそんな愛犬に舐めてもらう「良いこと」と「怖いこと」についてご紹介します。
犬の唾液に存在している微生物が、人の免疫力を高め、風邪の原因となるウイルスや、気管支炎、肺炎の感染を防いでいる可能性があるということが研究で明らかになっています。
よく幼い頃からペットを室内で飼育していると、免疫力の発達が早いと言われますが、それは口周りを舐められて微生物の交換をしているという見方もあります。
また同様の理由でアレルギーのもとになるものに幼い頃に慣れておくことで、正常な免疫ができ、アレルギー発症の予防になると言われています。
海外の研究でも、犬や猫と暮らした赤ちゃんは、呼吸器疾患に罹る割合が減ったという結果も報告されています。
犬とのキスが飼い主さんに「幸福感」をもたらす
犬に口を舐められると幸福感をもたらすドーパミンやセロトニン、オキシトシンなどのホルモンが活性化されます。
麻布大学の研究チームによって「飼い主と犬が触れ合うときにお互いからオキシトシンが分泌される」ということが報告されています。
飼い主さんが舐められたり、触ったりすることで幸せな気分になれるということにはこんな理由があったのですね
しかし愛犬に舐められて良いことがたくさん!と言うわけにはいきません…。
舐められることによる「怖いこと」もあります。
ここからは症例を交えてご紹介していきます。
症例をご紹介します。
男性は65歳。某日に交通事故で救急搬送された際に、「発熱」と「軽度の意識障害」が認められました。
細菌感染を疑われ、治療を行い症状は回復しましたが、後日の検査で敗血症の要因となる「グラム陰性桿菌」という菌が検出されました。このグラム陰性桿菌はお口の歯周ポケットにも存在し、歯周病の原因ともなる菌として知られています。
何故、この菌に感染し、敗血症を発症したのか、どうして交通事故になってしまったのか…。それには驚くべき真実があったのです。
医師が動物との接触歴を問診すると、日常的に男性の乾燥した皮膚の掻把痕(そうはこん)、いわゆる「かさぶた」を飼い犬が舐めているということが発覚。
このことから舐められたことによって菌に感染し「敗血症」を発症した可能性がある、という推測がされました。
この菌は、日本国内のペットとして飼われている犬・猫が口腔内に75-100%と高確率で保有しています。
人の皮膚や気道から感染し、免疫力が低下している、免疫系の病気に罹患している状況であれば、今回のように誰もが敗血症となる可能性があります。
敗血症は、罹患ショックや著しい臓器障害をきたす場合は死に至る場合もあるので、犬や猫を飼っている人は注意すべき菌です。
本症例の男性は、既往歴があり感染しやすい状態であったため、犬の「舐め」から感染し、敗血症を発症し、意識の混濁によって交通事故になったと推察されました。
犬の食べた後のお皿がヌルヌルする…こんなことを感じた経験のある飼い主さんも多いのではないでしょうか?このヌルヌルの正体は「バイオフィルム」というものです。
犬の唾液はアルカリ性です。そのため細菌が繁殖しやすく、この細菌の塊が歯垢の正体であるバイオフィルムなので、その状態で飼い主さんの口を舐めるのは衛生上おすすめできません。
今回、敗血症の場面で原因となっていた「グラム陰性桿菌」や、唾液に含まれるヌルヌルした菌の塊「バイオフィルム」は健康にも悪い影響を及ぼします。
このように “お口環境”とは“菌バランス”。日頃から口内菌バランスを良好に保っておくことで、健康被害リスクを低下させ、触れ合いによるメリットを享受することができます。
お口の菌バランス維持は、ペットでも人でも、いま注目されている方法です。口腔善玉菌のK12 M18を補うなど、お口の菌活をぜひおすすめします。
■お口の中のお花畑が健康を左右するお話(口内細菌叢/口内フローラ)
■意外に多い、犬・猫の口臭問題
■飼育犬に舐められて発症した
Pasteurella multocidaによる敗血症の1例
■敗血症.com 敗血症情報サイト
■fimATEST
愛犬・愛猫をコワい歯周病から守るために
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