今回は、認知症とお口の健康の深い関係についてお話します。
まず、認知症とお口ケアにどんな関係が?・・・と思われる方も多いかもしれません。そこでウイルスや細菌の感染経路で見てみると、細菌は最終的に私たちの口や鼻からのど(気道の粘膜)に入り込み、体の中に進入します。つまり体の入り口である口(口腔)は、外敵が体内に侵入する際にも重要な場所ということです。
次に今回の外敵は“歯周病菌”です。歯周病菌とひとことで言っても
P.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)
A.a.菌(アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス)
Td.菌(トレポネーマ・デンティコーラ)
T.f.菌(タンネレラ・フォーサイセンシス)
などなど、10種類以上が判明しています。
次の呼称は学術的な用語ではなく俗称ですが、もともと私たちの口内には未同定の細菌を含めて、良い働きをする「善玉菌」と悪い働きをする「悪玉菌」、どちらにも属さない多くの「日和見(ひよりみ)菌」が存在し、約700種が常在菌として住み着いています。
日和見菌は、善玉菌と悪玉菌の優勢な側に味方をする性質があり、善玉菌優位の正常なバランスが崩れ悪玉菌が優位に傾くことで歯垢(プラーク)の付着が加速するわけです。
ちなみに善玉菌、日和見菌、悪玉菌というのは見方のひとつで、一概に分類することが難しいことが分かってきており、別のカテゴライズもされつつあります。
プラークは歯の表面に付くネバネバした物質で、この中に細菌が住みついている「菌の棲家」です。悪玉菌にとって棲みやすい場所ですから、口の中の悪玉の細菌がどんどん侵入し増えていきます。悪玉菌の棲家では毒素を産生し、それが歯茎を腫らし、あるいは歯の周りの骨を溶かすなどの原因となります。
このプラークがやっかいなのは、外からの抗菌薬、抗菌成分に抵抗し、薬が効きにくい構造となっていること。まさに悪玉菌の要塞です。このプラークが固まったものが歯石と呼ばれるものです。厚生労働省と日本歯科医師会の呼びかけで平成元年から推進されている「80歳になっても自分の歯を20本以上持とう」という運動「8020運動」でも歯周病対策は重要な位置づけにあります。
8020推進財団の呼びかけも「歯周病対策をすることで認知症リスクを減らす」ことが大きなテーマになっています。
■歯周病(テーマパーク8020)
https://www.jda.or.jp/park/trouble/
さて、ここからが本題です。
歯周病を予防することで脳血管性認知症とアルツハイマー認知症の、2つの認知症リスクを減らすことが期待できるのです。
グラフは残存歯数と認知症についてです。歯の残存数が多いほど健康であり、残存数の低下とともに、認知症が増えていることがわかります。アルツハイマー型認知症の人は健康な人よりも歯の本数が少なく、また、残っている歯が少ないほど脳の委縮が進んでいたということが報告されています。
・1-脳血管性認知症のリスクを減らす
悪玉菌の要塞に棲む歯周病菌が血液中に流れ込むことで、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞などのリスクを高めることが確認されています。脳卒中は脳血管性認知症の原因になります。そのため歯周病を予防することで動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞のリスクを低下させることができます。
・2-アルツハイマー型認知症のリスクを減らす
認知症の中で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、脳にアミロイドβなど異常なたんぱく質が蓄積することで脳細胞が損傷したり神経伝達物質が減少し、脳の全体が萎縮して引き起こされると考えられています。委縮は、記憶を担っている海馬という部分から始まり、だんだんと脳全体に広がります。このアミロイドβの脳への蓄積を減らすことで認知症リスクを低下させることが期待できる、ということを以下にご紹介したいと思います。
体内に入ることでアミロイドβが産生され脳に蓄積することが解明(下記1)されていましたが、2020年10月についにその蓄積のメカニズムが解明(下記2)されました。
(1)2019年11月、九州大学私学研究員によって、ヒト歯周病の歯茎で脳内老人斑成分が産生されていることが世界で初めて判明しました。
■世界初ヒト歯周病の歯茎で脳内老人斑成分が産生されていることが判明
〜歯周病によるアルツハイマー型認知症への関与解明の新展開〜https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/396
(2)さらに、2020年10月5日、九州大学によって、このアルツハイマー型認知症の原因物質が歯周病によって脳に蓄積するメカニズムが解明されました。
■認知症の原因物質 歯周病によって蓄積する仕組みを解明
(2020年10月5日の朝日新聞)https://www.asahi.com/articles/ASNB544G9NB5TIPE003.html
上記(2)の九州大学による画期的な研究についての記事では、“認知症の7割を占めるアルツハイマー病は、歯周病の原因菌やその毒素が血管を通じて体内に侵入することで「アミロイドβ」などの異常なタンパク質が体内で作られ、脳に蓄積することが解明されていましたが、その蓄積の仕組みを九州大などの研究チームが解明した”と報じています。
研究では、歯周病に感染させたマウスの脳血管の表面では「アミロイドベータ」を脳に運ぶ受容体が約2倍、脳細胞への蓄積量も10倍に増えており、記憶実感でも感染マウスの記憶力低下が裏付けられました。
このように、歯周病が認知症(脳血管性認知症/アルツハイマー型認知症)リスクであるのなら、歯周病の予防や治療は認知症の進行を遅らせる有効な手段といえるかもしれません。
この歯周病を予防するには、ブラッシング、デンタルフロス、歯間ブラシなどを使用したセルフケアに加えて、行きつけの歯科でのプラークコントロールは欠かせません。
ところが近年、世界から注目を集めている新しい方法があります。それは、口腔善玉菌を利用して、お口の悪玉菌の増加を阻害するという方法です。
この口腔善玉菌はニュージーランドのオタゴ大学の研究から確認されたもので、健常者の中でも特に虫歯にならない人の口腔内から発見された「口腔善玉菌K12(ストレプトコッカス・サリバリウスK12)」そしてM18(ストレプトコッカス・サリバリウスM18)」です。
口腔善玉菌M18は、天然の抗菌物質(バクテリシオン)」を産生し、悪玉菌の要塞を破壊します。口腔善玉菌K12は強力な抗菌物質であるサリバリシンA・Bを同時に産生し口腔内で定着することにより悪玉菌に対して攻撃的に働き、虫歯菌、歯周病菌に抑止力として働きます。
第一世代は「磨く」、第二世代は「殺菌する」、そしていま、「口内フローラ革命」とも言えそる、歯磨きの仕上げに菌の力を活用する「第三世代のオーラルケア」の時代が世界では始まっています。
これらの善玉菌については、善玉菌を増やすメリットなど、下記の記事でご紹介しています。
・歯周病を抑止する口腔善玉菌K12
・歯垢/歯石を抑止する口腔善玉菌M18
◆医療関係者向け情報(口腔善玉菌K12/M18)
https://zendaman-labo.com/medical/
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